「生命保険って、こういっては何ですけど、商品の内容よりネーミングが優れているのかもしれないですね」。先日、企業年金関連の仕事に携わっている方とお会いしたとき指摘されました。
この方が具体例として挙げたのは個人年金保険と確定拠出年金でした。老後のための資金準備や公的年金不安への「対策」として一般の方に提示した場合、どちらが関心を引くかといえば、どう考えても前者だろう――というわけです。
このコラムでは、既に2012年9月28日付の「個人年金より断然有利な確定拠出年金」で、確定拠出年金を利用可能な人は個人年金保険より優先的に検討すべきだとお薦めしました。
しかし確定拠出年金についての知識がなければ、私も個人年金保険の方に反応すると思います。いかにも年金関連の不安を解消するための一般的な解決策、とい う印象を受けるからです。一方で確定拠出年金には、名前からして「自分には難しくて使い勝手が悪そうな商品ではないか」という先入観を持ってしまうかもし れません。
ポイントは、お金を準備する目的と商品名が「直結している感じ」があるかどうかの差でしょう。こうした例は他の保険商品にもあ ると思います。入院時などに備える「医療保険」、がんにかかったときのために備える「がん保険」、進学資金準備のために薦められる「学資保険」などです。
資産運用や人生設計についての多数の著書を持つ作家・橘玲氏が、世界経済の見えない構造的問題を読み解く『マネーポスト』の連載「セカイの仕組 み」。アベノミクスが最悪シナリオの財政破綻に向かった場合、【1】金利の上昇、【2】円安(通貨の下落)、【3】インフレという3つのリスクが想定され るが、ここでは「インフレ」について解説する。
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20年もデフレが続いて、私たちはモノの値段が上がることをうまく想像できなくなっているが、財政破綻は最終的にはインフレに行き着くことになる。
これはきわめて単純な理屈で、インフレというのは国家にとって税金の一種であり、歴史上、巨額の財政赤字はほとんどが「インフレ税」によって清算 されてきた。インフレで借金の実質価値を減らすことができなければ、どこまでも財政赤字は拡大しつづけるから、けっきょくインフレになるほかはない。
国債というのは固定金利による借金のことだ。あなたの月収が20万円で、期間10年で1000万円の住宅ローンを年利3%で借りているとしよう。 このとき日本を900%(10倍)超のハイパーインフレが襲えば、生活はなにひとつ楽にならなくても、名目の月収は200万円になる。金利も大幅に上がっ ているだろうから、これを銀行に預けるだけで普通預金でも20%以上の利息がつくかもしれない。
しかしこれは、国債の(最終的な)保有者である国民にとってはとんでもない事態だ。物価が10倍になれば、1000万円の貯金の実質価値は10分 の1になってしまう。銀行が破綻すれば、1000万円超の預金はペイオフで一部しか返ってこない。1990年代末の保険会社の破綻では、保険金の減額や保 険料の大幅な値上げが社会問題になった。
いったんインフレが起こると、円安を引き起こす。これは因果関係を逆にして、円安が輸入品の価格を押し上げて国内物価をインフレにする、といって も同じことだ。このようにして財政が破綻すると、金利の上昇→円安→物価の上昇というスパイラルが始まって、加速度的にインフレ率が上昇し、最後はハイ パーインフレと呼ぶような物価の暴騰に至る。
インフレの最大の被害者は年金だけで生活しているひとたちで、急速な物価の上昇で家賃を払えずにホームレスになる高齢者が激増するかもしれない。ハイパーインフレとは、国民を犠牲にして国家が借金を清算することなのだ。
(「セカイの仕組み」より抜粋)